第12章 調査
AI時代の小さな店
小さな店で生成AIを使ったことがあるのは、まだ4軒に1軒ほどです。止まっている理由はお金より「使い道が分からない」こと。AIは文章づくりから始めて、浮いた手は接客に回します。
この章のポイント
- 生成AIを使ったことがある店は26.7%。止まる理由の1位は「使い道が思いつかない」
- デジタル化は、会計と予約から。浮いた手は接客に回す
- お客さんは「早く・短く・目的を決めて」来る。絞った店に有利な変化
生成AIを使っている店は、まだ少ない
- 飲食店経営者326人(7割が1店舗)のうち、「積極的に活用」は16.3%、「試したがうまく使えていない」が10.4%。使ったことがある店は合わせて26.7%(2025年6月) [1]
- 使っている店の満足度は73.5%と高い [1]
- 使う予定がない理由は、「使い道が思いつかない」62.2%、コスト24.3% [1]
小さな店で使いやすいAIの使い道
無料〜月数千円の汎用のAIでできることとして、次のような例が挙がっています [2]。
- SNSの投稿文、メニューの説明文、口コミへの返信の下書き
- 接客のおすすめトークの案
- 外国人スタッフ向けの作業マニュアルや字幕つきの動画
- 天気やイベントを入れた仕込み量の見立て
- 手書きの伝票を表のデータにする
AIで作った料理写真や店内写真をSNSや看板に使うのは、実物と違うためクレームや景品表示法違反のおそれがあります [2]。ガス焼きの店がAIで炭火焼きの画像を作ると、お客さんを誤解させる、という注意例もあります [3]。
デジタル化は、会計と予約から
- 何らかのデジタルツールを導入済みか検討中の店は65.8%。内訳はキャッシュレス50.8%、予約・顧客管理46.2%、売上・経費管理39.4%、セルフオーダー18.9%(2025年3月、813人) [4]
- 導入した店の81.0%が何らかの効果を感じている。導入の壁の1位は毎月の費用(30.7%) [4]
- 15席ほどの個人店では厨房と客席が近いので、配膳ロボットの効果は小さい。先に電話予約を楽にした方がよい、という意見もある [5]
- お客さんは作業の自動化には慣れたが、好きになったわけではない。セルフオーダーの利用経験は67.5%、今後も使いたいは52.5%(2025年) [6]
使える補助金(2026年10月時点)
| 補助金 | スケジュール | 内容 |
|---|---|---|
| デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金) | 6次の締切 10月30日、7次 12月1日 | 補助率は原則1/2以内。POSレジ、モバイルオーダー、予約管理、会計ソフトなど [7][8] |
| 小規模事業者持続化補助金(第20回) | 11月5日〜12月15日の予定 | 上限50万円(特例で最大250万円)、補助率は原則2/3。改装・看板・チラシ・Webサイトなど [9][8] |
| 中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型) | 随時受付 | 従業員5人以下なら上限500万円、補助率1/2以下。券売機、自動精算機など [10] |
二次情報で確認した内容です。申請の前に、必ず公式サイトで最新の公募要領を確認してください。どの補助金も、原則として交付が決まる前に発注・契約した費用は対象外です。
お客さんは「早く・短く・目的を決めて」来る
- 二次会が「減った」は、仕事で36.8%、プライベートで33.3%(2025年8月) [11]
- お酒を飲み始める時間・終える時間が、2019年より早くなった人が多い [12]
- 思いつきの来店が減り、「何を食べに行くか」を決めて店を選ぶ形が定着した。予約客が5割を超えたバル、1人客が中心になったバーもある [12]
- 人手不足も続く。外食の特定技能は2026年4月に新しい受け入れが止まった [13]
小さな店の勝ち筋として言われていること
- 席数・品数・営業時間を絞って、一人でも質を落とさない
- 名物と予約で「目的を決めて来るお客さん」をつくる
- 予約と会計だけをデジタルにして、浮いた手を接客に回す
- 料理は据え置き、ドリンクとコースで単価を上げる
- 間借りで小さく試してから、自分の店を出す(吉野家HD系のシェアレストランでは、1,000店超が間借りで開業) [14]
注意紹介される成功例の多くは、開業支援やツールの会社の発信で、売上の数字はほとんど店主の自己申告です。架空のモデルケースだった例もあります [15]。失敗の型もはっきりしていて、若い人やSNS映えに振り切って常連を失う、一人営業で体調を崩してそのまま休業する、などがあります [16][15]。
AIで調べた勝ち筋は、このサイトの現場の話とほぼ同じところに着地しています。違うのは根拠で、現場の話は経験から、勝ち筋の多くは業者の発信からきています。
出典
- PR TIMES(シンクロ・フード、生成AIの活用調査 2025年6月)
- ぐるなび通信(飲食店のAI活用)
- BCN+R(AI画像の注意例)
- リクルート「飲食店のデジタル化調査」(2025年)
- LifeXrees(小さな店の自動化)
- ホットペッパーグルメ外食総研「セルフオーダー調査」(2025年)
- 補助金ポータル(デジタル化・AI導入補助金のスケジュール)
- オフィスツリー(飲食業の補助金 2026)
- J-Net21(小規模事業者持続化補助金 第20回)
- 補助金ポータル(省力化投資補助金 カタログ注文型)
- マネーポストWEB(博報堂生活総合研究所、2025年8月)
- 日本食糧新聞(2026年9月、飲み方の変化)
- ニュースイッチ(外食の特定技能)
- 日本食糧新聞(シェアレストラン)
- 小宅企画(小さな飲食店の売上)
- 財経新聞(帝国データバンク、2025年上半期)
小さなお店で生成AIを使ったことがあるのは、まだ4軒に1軒ほどです。止まっている理由は、お金よりも「使い道が分からない」ことでした。AIは文章づくりから始めて、浮いた手は接客に回します。
この章は、2025〜2026年の調査と統計をもとにまとめています。
生成AIを使っている店は、まだ少ない
2025年6月に、飲食店の経営者326人(7割が1店舗のお店)に聞いた調査があります。生成AIを「積極的に活用している」のは16.3%、「試したがうまく使えていない」が10.4%で、使ったことがあるお店は合わせて26.7%でした[1]。
使っているお店の満足度は、73.5%と高い数字です。一方で、使う予定がない理由は、「使い道が思いつかない」が62.2%で、コストの24.3%を大きく上回りました[1]。
使えば満足しているのに、何に使えばいいのかが分からない。小さなお店のAIは、今そういう段階にあります。
小さな店で使いやすいAIの使い道
では、何に使えばいいのか。無料から月数千円くらいの、ふつうのAIでできることとして、次のような例が挙がっています[2]。
まずは、文章の下書きです。SNSの投稿文、メニューの説明文、口コミへの返信などを、AIに下書きしてもらえます。接客のときのおすすめトークの案を考えてもらうこともできます。
外国人のスタッフがいるお店なら、作業マニュアルや、字幕つきの説明動画づくりにも使えます。天気やイベントの予定を入れて、仕込みの量を見立ててもらうこともできます。手書きの伝票を、表のデータにすることもできます。
やってはいけない使い方
ひとつ注意があります。AIで作った料理の写真や店内の写真を、SNSや看板に使うのはやめておきましょう。実物と違うため、クレームや、景品表示法違反のおそれがあります[2]。
たとえば、ガス焼きのお店がAIで炭火焼きの画像を作ると、お客さんを誤解させてしまう、という注意例もあります[3]。
デジタル化は、会計と予約から
2025年3月の調査(813人)では、何らかのデジタルツールを導入済み、または検討中のお店は65.8%でした。内訳は、キャッシュレス決済(50.8%)、予約・顧客管理(46.2%)、売上・経費の管理(39.4%)、セルフオーダー(18.9%)です[4]。
導入したお店の81.0%は、何らかの効果を感じています。導入の壁として一番多かったのは、毎月の費用(30.7%)でした[4]。
小さなお店では、何から入れるかが大事です。15席ほどの個人店では、厨房と客席が近いので、配膳ロボットの効果は小さい。それより先に、電話予約を楽にした方がよい、という意見もあります[5]。
お客さんの側も、自動化に慣れてはきましたが、好きになったわけではありません。セルフオーダーを使ったことがある人は67.5%ですが、今後も使いたい人は52.5%でした(2025年)[6]。
使える補助金(2026年10月時点)
デジタル化には、補助金を使える場合があります。2026年10月時点の主な補助金は、次のとおりです。
| 補助金 | スケジュール | 内容 |
|---|---|---|
| デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金) | 6次の締切 10月30日、7次 12月1日 | 補助率は原則1/2以内。POSレジ、モバイルオーダー、予約管理、会計ソフトなど[7][8] |
| 小規模事業者持続化補助金(第20回) | 11月5日〜12月15日の予定 | 上限50万円(特例で最大250万円)、補助率は原則2/3。改装・看板・チラシ・Webサイトなど[9][8] |
| 中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型) | 随時受付 | 従業員5人以下なら上限500万円、補助率1/2以下。券売機、自動精算機など[10] |
これは二次情報で確認した内容です。申請の前に、必ず公式サイトで最新の公募要領を確認してください。また、どの補助金も、原則として交付が決まる前に発注や契約をした費用は対象になりません。
お客さんは「早く・短く・目的を決めて」来る
お客さんの飲み方も変わってきています。2025年8月の調査では、二次会が「減った」と答えた人が、仕事の飲み会で36.8%、プライベートで33.3%でした[11]。お酒を飲み始める時間、飲み終える時間が、2019年より早くなった人も多くなっています[12]。
思いつきでお店に入ることが減り、「何を食べに行くか」を決めてお店を選ぶ形が定着してきました。予約客が5割を超えたバルや、1人客が中心になったバーもあります[12]。
人手不足も続いています。外食の特定技能(外国人材の受け入れの仕組み)は、2026年4月に新しい受け入れが止まりました[13]。
こうした変化は、席数が少なく、予約を中心にしていて、名物がはっきりしているお店には、有利な変化だと読めます。
小さな店の勝ち筋として言われていること
調査や専門家の発信から、小さなお店の勝ち筋として言われていることを整理すると、5つにまとまります。
1つ目は、席数・品数・営業時間を絞って、一人でも質を落とさないこと。2つ目は、名物と予約で、「目的を決めて来るお客さん」をつくること。3つ目は、予約と会計だけをデジタルにして、浮いた手を接客に回すこと。4つ目は、料理の値段は据え置いて、ドリンクやコースで単価を上げること。5つ目は、間借りで小さく試してから、自分のお店を出すことです。吉野家ホールディングス系のシェアレストランでは、1,000店を超えるお店が、間借りで開業しています[14]。
ただし、注意も必要です。紹介される成功例の多くは、開業支援やツールの会社の発信で、売上の数字はほとんどが店主の自己申告です。架空のモデルケースだった例もあります[15]。
失敗の型も、はっきりしています。若い人やSNS映えに振り切って、常連を失ってしまう。一人営業で体調を崩して、そのまま休業してしまう。こうした例が挙げられています[16][15]。
まとめ
AIで調べた勝ち筋は、このサイトの現場の話とほぼ同じところに着地しています。席を絞り、仕込み型の料理で一人でも回し、リピーターと予約を大事にして、値下げで戦わない。違うのは根拠で、現場の話は経験から、勝ち筋の多くは業者の発信からきています。
AIは、使い道が決まれば役に立ちます。まずは文章づくりから始めて、浮いた時間を、お客さんの様子を見る接客に回す。第9章で話した70点の接客は、AI時代になっても、小さなお店の土台です。
出典
- PR TIMES(シンクロ・フード、生成AIの活用調査 2025年6月)
- ぐるなび通信(飲食店のAI活用)
- BCN+R(AI画像の注意例)
- リクルート「飲食店のデジタル化調査」(2025年)
- LifeXrees(小さな店の自動化)
- ホットペッパーグルメ外食総研「セルフオーダー調査」(2025年)
- 補助金ポータル(デジタル化・AI導入補助金のスケジュール)
- オフィスツリー(飲食業の補助金 2026)
- J-Net21(小規模事業者持続化補助金 第20回)
- 補助金ポータル(省力化投資補助金 カタログ注文型)
- マネーポストWEB(博報堂生活総合研究所、2025年8月)
- 日本食糧新聞(2026年9月、飲み方の変化)
- ニュースイッチ(外食の特定技能)
- 日本食糧新聞(シェアレストラン)
- 小宅企画(小さな飲食店の売上)
- 財経新聞(帝国データバンク、2025年上半期)