仕込んで温めるだけの料理なら、一人で回せる
- 一人営業の店づくりの解説は、ほぼ同じことを言っている。メニューは3〜5品に絞る、煮込みや漬け込みなど前もって仕込める料理を選ぶ、混む時間は盛り付けと温めだけにする [1]
- カレーやパスタのような単品の専門店なら、約10席は1人で回せる [1]
- 五反田のカウンター約8席のビストロは、仕込み8割・その場の仕上げ2割で一人営業を回している [2]
第6章 現場の話+データ
どんな料理を出すかで、オペレーションは大きく変わります。仕込んでおいて温めれば出せる料理なら、一人で回せます。
この章のポイント
私はほとんどずっと鉄板焼きの店でした。居酒屋などいろいろな店もやりましたが、お好み焼きはおいしいけれど、難しいという印象です。
現場で見てきたこと
料理が好きな人、職人さんほど、お客さんが来てからいろいろやりたくなります。でも、そこにこだわるのは極力避けた方がいいです。
負のスパイラル
正確な言い方カレーは利益を出しやすい仕組み。ただし参入が多く、原価高の逆風もある。
カレーや煮物の大量の作り置きは、ウエルシュ菌の食中毒が起きやすい料理です。浅い容器に小分けしてすぐ冷やす、温め直すときは中心までしっかり加熱する、保温するなら65℃以上に保つ、が基本です [8]。
「提供が遅いとお客さんが来なくなる」ことを直接測った日本の調査は見つかりませんでした。近いものとして、個人経営の中華料理店の客257人を調べた研究では、年13回以上来る常連ほど待ち時間を重視していました [9]。
どんな料理を出すかによって、オペレーションは大きく変わります。仕込んでおいて、温めれば出せる料理なら、一人で回すことができます。
できる限り仕込みをしておいて、あとは温めれば出せる。そういう料理の方が、一人で運営することができます。
たとえば居酒屋や小料理屋であれば、煮物やスープ系の料理です。牛すじの煮込みや肉じゃがなら、お鍋で温めてお客さんに出すことができます。
これを究極まで突き詰めていくと、すごく営業しやすいのがカレー屋さんです。カレー屋は、本当にカレーをかければいいだけです。
カレーの上に、オプションでとんかつを乗せたりすると、少し手間はかかります。それでも、カレー屋は本当に利益が出やすいです。提供までのオペレーションがすごく簡単なので、うまく人件費を浮かすことができるからです。
一人でランチのお店をやるとしたら、カレー屋さんのようなお店は、すごくおすすめだと思います。
逆に、お好み焼き屋のようなお店は、注文が入ってから焼き上がるまでに、すごく時間がかかります。20〜30分かかります。
お客さんが自分で焼くスタイルなら、混ぜて焼けばいいだけの状態のものを持っていけば済みます。それでも、お客さんが焼き始めてから食べ始めるまでが、すごく遅いです。だから、お店が回転しません。
夜はそこまで回転を求めなくていいのですが、ランチは絶対に回転させないといけません。そこはかなりきついです。それに、そもそもの提供コストも、かなりきついです。すぐにお腹がいっぱいになってしまう、ということもあります。
私はほとんどずっと鉄板焼きのお店でした。居酒屋など、いろいろなお店もやりましたが、お好み焼きはおいしいけれど、難しいという印象です。
粉物は原価が安い、とよく言われます。でも、提供までのコストなどをいろいろ考えると、リスクだという感覚があります。
だから、すでに半分以上できあがっている状態のものを出すのが、すごくいいです。
たとえば刺身なら、切って持っていくだけです。焼くという工程がありません。焼くとしても、最後の仕上げだけにします。パスタなら、カルボナーラのようなものではなく、茹でて上に何かをかければ完成、という状態なら、すぐに出せます。
注文が入ってから、切って、焼いて、と一から作るやり方をしていると、お客さんがいっぱい入ってきたときに、料理を出せなくなってしまいます。
そうなると、お客さんは不満になります。料理が来るのが遅いからです。そしてオペレーションが悪いと、できあがる料理も少し雑になります。お客さんも「こんな雑な料理は嫌だな」と感じて、来なくなってしまいます。
料理が好きな人、特に職人さんほど、お客さんが来てからいろいろやりたいという気持ちが強いと思います。でも、それをやっていくと、お客さんは総合的に不満になって、おいしくないと感じるようになります。シェフも忙しくなって、カリカリしてしまいます。そうなると、接客態度も悪くなってしまいます。
負のスパイラル
だから、注文が入ってからの手間にこだわるのは、極力避けた方がいいです。
判定:裏づけあり
一人営業のお店づくりの解説も、ほぼ同じことを言っています。メニューは3〜5品に絞る。煮込みや漬け込みなど、前もって仕込める料理を選ぶ。混む時間は、盛り付けと温めだけにする[1]。カレーやパスタのような単品の専門店なら、約10席は1人で回せるとされています[1]。
実際の例では、五反田にあるカウンター約8席のビストロが、仕込み8割、その場での仕上げ2割で、一人営業を回しています[2]。
判定:条件つき
仕組みとしては、たしかに有利です。1,000円のカレーで原価300円が目安で、トッピングでも利益が出ます[3]。
ただし、カレー店の倒産は2024年度に13件で、過去最多でした。原因は、米の値上がり(5年で約1.4倍)、野菜や輸入牛肉の値上がり、そしてスパイスカレーブームのあとの競争です[4]。
正確に言うなら、「カレーは利益を出しやすい仕組み。ただし参入するお店が多く、原価高の逆風もある」です。
判定:裏づけあり
経営者の間では、「お好み焼き屋は儲からない」とよく言われます。焼くのに時間がかかり、お腹がふくれて、お酒が進まないからです(2017年の記事)[5]。メニューに「焼き上がりに20分以上いただきます」と書いているお店もあります[6]。
2025年の粉もん店(お好み焼き・焼きそば・たこ焼き)の倒産は28件で、2009年以降で最も多い数でした[7]。
ただし、たこ焼きのように提供が速い持ち帰り型のお店は、同じ粉もんでも別ものとして考えた方がいいです。
仕込み型のお店には、特有の注意点があります。カレーや煮物の大量の作り置きは、ウエルシュ菌という菌の食中毒が起きやすい料理です。
浅い容器に小分けしてすぐ冷やす。温め直すときは、中心までしっかり加熱する。保温するなら65℃以上に保つ。これが基本です[8]。
「料理が遅いとお客さんが来なくなる」ことを、直接測った日本の調査は見つかりませんでした。
近いものとして、個人経営の中華料理店のお客さん257人を調べた研究があります。この研究では、年に13回以上来る常連さんほど、待ち時間を重視していました[9]。
一人で回すなら、仕込んで温めるだけで出せる料理にする。これは今の一人営業の考え方とそのまま一致しています。カレーは仕組みとしては有利ですが、競争と原価高の逆風があります。お好み焼きのように提供に時間がかかる料理は、特にランチでは難しい。そして作り置きの料理は、すぐ冷まして、中心まで温め直すことを忘れないようにします。