1日3万円×30日=90万円でも、人件費込みで赤字にならない設計
- 月90万円(年1,080万円)は、従業者1〜4人の酒場・ビヤホールの「1人あたり年間売上」1,114万円とほぼ同じ(日本政策金融公庫) [1]
- 1人5,000円は、忘年会1回あたりの予算の平均5,004円(2025年10月)と同じくらいで、値付けとしては無理がない [2]
- ただし経費の側が、当時とは大きく変わっている。今の相場では、平均3万円だと赤字にはならないが、オーナーの生活費がほとんど残らない(下の試算)
第3章 現場の話+データ
お客さんはそんなにいっぱい来ない。それを前提に設計します。ただ、今の相場では1日3万円だと、オーナーの生活費がほとんど残りません。1日の平均で4万円を最低ラインにして、計算式で確かめます。
この章のポイント
8卓くらいの店の、1日の売上の目安
計算に使う数字(1か月)です。
| 項目 | 金額 | 根拠 |
|---|---|---|
| 食材・飲み物 | 売上の30% | 原価率30% |
| 決済手数料 | 売上の2.94% | 飲食店の平均(2024年度) [3] |
| アルバイト1人 | 16.64万円 | 東京都の最低賃金1,280円×月130時間 [4] |
| 家賃・光熱費・その他 | 26万円 | 仮の数字(家賃15万+光熱費6万+その他5万) |
| 1日の平均 | 手元に残る分 | 月の売上(30日) | 原価と手数料 | アルバイト・家賃など |
|---|---|---|---|---|
| 3万円 | 約17.7万円 | 90万円 | 29.6万円 | 42.6万円 |
| 4万円 | 約37.8万円 | 120万円 | 39.5万円 | 42.6万円 |
| 5万円 | 約58.0万円 | 150万円 | 49.4万円 | 42.6万円 |
| 6万円 | 約78.1万円 | 180万円 | 59.3万円 | 42.6万円 |
「手元に残る分」は、税金・社会保険・借入の返済・設備の修理の前の金額です。家賃・光熱費は統計が見つからなかったため、仮の数字を置いています。自分の店の数字に置きかえて計算してください。原価率が35%なら、手元に残る分は上から順に4.5万・6万・7.5万・9万円減ります。売上が増えるとアルバイトの時間も増えることが多いので、5万円・6万円の行は少し多めに出ています。
月曜は0組、金曜・土曜は混む、という1週間です。1組2名、客単価5,000円で計算します。
| 曜日 | 売上 | 計算式(客単価 × 人数) | 組数 |
|---|---|---|---|
| 月 | 0円 | 5,000円 × 0名 | 0組 |
| 火 | 50,000円 | 5,000円 × 10名 | 5組 |
| 水 | 20,000円 | 5,000円 × 4名 | 2組 |
| 木 | 30,000円 | 5,000円 × 6名 | 3組 |
| 金 | 60,000円 | 5,000円 × 12名 | 6組 |
| 土 | 80,000円 | 5,000円 × 16名 | 8組 |
| 日 | 40,000円 | 5,000円 × 8名 | 4組 |
| 1週間 | 280,000円 | 計56名 | 28組 |
1日の1万円は、次のどちらかで作れます。
今の相場での言い方「お客さんが少ない日を前提に、潰れない設計にする」という考え方は今も正しい。ただし今の相場では、平均3万円だと手元に月18万円ほどしか残らない。1日の平均4万円を最低ラインにし、決済手数料の約3%と毎年の賃上げ分を最初から計算に入れる。そのうえで、リピーターと予約、長くいてもらう工夫で、平均を1万円ずつ上げていく。
この数字の一次データは見つかりませんでした。日本政策金融公庫が2016年に開業した会社を追った調査では、4〜5年で廃業したのは飲食店・宿泊業で14.7%でした。全業種で最も高い数字ですが、7割には遠い数字です [9]。ただし、借金なしで閉める個人店は倒産の統計に入らないので、実際に閉める店はもっと多いとみられます。
お客さんは、そんなにいっぱい来ません。それを前提に、お店を設計します。
ただ、今の相場では、1日3万円の売上だとオーナーの生活費がほとんど残りません。このページでは、1日の平均4万円を最低ラインにして、計算式で確かめていきます。
個人の飲食店は、1日に1〜2人しか来ない日も結構あります。平日の、本当にお客さんが来ない日です。
繁盛するのは、金曜日の夜や土日です。ただ、これは場所によります。オフィス街なら平日がすごく盛んで、土日はあまり入らない、ということもあります。
2階にあるお店で、その日の通りがかりのお客さんを狙うとしたら、まったく来ない可能性も十分にあります。その日は、人件費だけが削られていくことになります。
0組の日もあれば、8組の日もあります。だから売上は、ならした1日の平均で考えます。
目安にしたいのは、1人5,000円のお客さんが8名(4組)で、1日4万円です。
1日の平均:1人5,000円 × 8名(4組)= 40,000円
1か月:4万円 × 30日 = 1,200,000円
この平均でも、人件費を含めて赤字にならず、オーナーの生活費が残る状態にしておきます。
8卓くらいのお店なら、1日の売上はだいたい3万円から10万円の間です。3万円を切る日も、ザラにあります。だから、平均の最低ラインを4万円に置いて、平均はそれより上にしたいところです。
まずは、最低のケースを守れる状態にしておくこと。人件費も含めてです。人気が出てきたら、そのときはもう少しお金をかけていいと思います。
本当に1日平均3万円しか売れないのであれば、お休みは作れません。30日、31日、まるまる営業する必要があります。
最初の頃も、途中でも、それくらい大変な時期はあります。だから、ずっと営業し続けられるような商品設計、スタイル設計が重要になってきます。
小さなお店は、最初は「自分+アルバイト1人」くらいの感覚でやっていきます。土日や繁忙期など、忙しいときだけ2人にします。
平日はいつも3万円くらいなのに、いきなり20万円分のお客さんが来てしまうと、かなり大変なことになります。それでも、人の配置は一番下のラインに合わせておく必要があります。
スタートのところと損益分岐点は、数字を出して、はっきり理解しておきます。
低く設定しておけば、プラスになるのが早いです。逆に「1日10万円(10枚)売れるぞ」というような計画の立て方だと、売れなかったときのリスクがすごく大きくなります。
もちろん、どこにお店があるかにもよります。それでも基本的には、売上が上がらなかったときのリスクを考えた設計が必要です。
小さなお店は、お客さんを回転させるより、長くいてもらうことが大事です。
ゆっくりしてもらえれば、もう1杯、もう1品と注文が増えて、客単価が上がります。2時間制のような時間の区切りは、避けた方がいいです。回転より単価の話は、第1章 リピーターが一番大事。回転より単価で詳しくまとめています。
判定:今の相場で修正
月90万円は、年にすると1,080万円です。これは、従業者1〜4人の酒場・ビヤホールの「1人あたり年間売上」1,114万円とほぼ同じです(日本政策金融公庫)[1]。
1人5,000円という値付けも、忘年会1回あたりの予算の平均5,004円(2025年10月)と同じくらいで、無理はありません[2]。
ただ、経費の側が、当時とは大きく変わっています。今の相場で計算すると、平均3万円では赤字にはならないものの、オーナーの生活費がほとんど残りません。実際に計算してみます。
計算に使う数字(1か月)は、次のとおりです。
| 項目 | 金額 | 根拠 |
|---|---|---|
| 食材・飲み物 | 売上の30% | 原価率30% |
| 決済手数料 | 売上の2.94% | 飲食店の平均(2024年度)[3] |
| アルバイト1人 | 16.64万円 | 東京都の最低賃金1,280円×月130時間[4] |
| 家賃・光熱費・その他 | 26万円 | 仮の数字(家賃15万+光熱費6万+その他5万) |
計算式は、この3行です。
月の売上 = 1日の平均 × 30日
原価と手数料 = 月の売上 × 32.94%
手元に残る分 = 月の売上 − 原価と手数料 − 42.64万円
32.94%は、原価率30%と決済手数料2.94%を足したものです。42.64万円は、アルバイトと、家賃・光熱費・その他を足したものです。
これを1日の平均ごとに計算すると、次のようになります。
| 1日の平均 | 手元に残る分 | 月の売上(30日) | 原価と手数料 | アルバイト・家賃など |
|---|---|---|---|---|
| 3万円 | 約17.7万円 | 90万円 | 29.6万円 | 42.6万円 |
| 4万円 | 約37.8万円 | 120万円 | 39.5万円 | 42.6万円 |
| 5万円 | 約58.0万円 | 150万円 | 49.4万円 | 42.6万円 |
| 6万円 | 約78.1万円 | 180万円 | 59.3万円 | 42.6万円 |
「手元に残る分」は、税金・社会保険・借入の返済・設備の修理の前の金額です。家賃と光熱費は統計が見つからなかったため、仮の数字を置いています。ご自分のお店の数字に置きかえて計算してみてください。
原価率が35%なら、手元に残る分は、上の行から順に4.5万・6万・7.5万・9万円減ります。また、売上が増えるとアルバイトの時間も増えることが多いので、5万円と6万円の行は少し多めに出ています。
平均3万円だと、赤字にはならないものの、手元に残るのは月約18万円です。家賃が高い場所や、アルバイト2人の体制なら赤字になります。
平均4万円なら、週1日休んで月26日の営業にしても、手元に約27万円残ります(4万円×26日=104万円で計算)。
「平均4万円」と言われても、毎日4万円売れるわけではありません。そこで、月曜は0組、金曜と土曜は混む、という1週間で計算してみます。1組2名、客単価5,000円です。
| 曜日 | 売上 | 計算式(客単価 × 人数) | 組数 |
|---|---|---|---|
| 月 | 0円 | 5,000円 × 0名 | 0組 |
| 火 | 50,000円 | 5,000円 × 10名 | 5組 |
| 水 | 20,000円 | 5,000円 × 4名 | 2組 |
| 木 | 30,000円 | 5,000円 × 6名 | 3組 |
| 金 | 60,000円 | 5,000円 × 12名 | 6組 |
| 土 | 80,000円 | 5,000円 × 16名 | 8組 |
| 日 | 40,000円 | 5,000円 × 8名 | 4組 |
| 1週間 | 280,000円 | 計56名 | 28組 |
1週間の売上は28万円なので、1日の平均は28万円÷7日=4万円です。月にすると4万円×30日=120万円で、手元に残る分は、120万円−120万円×32.94%−42.64万円=約37.8万円になります。
月曜が0組でも、ほかの日で取り返せれば平均4万円になります。0組の日があることを前提に、1週間でならして考えればいいのです。
では、1日の平均が1万円上がると、どうなるでしょうか。
増える売上:1万円 × 30日 = 月300,000円
増える手元:30万円 −(30万円 × 32.94%)= 月201,180円
家賃やアルバイトの代金は変わらないので、増えた売上から引くのは、原価と手数料だけです。1年にすると約241万円になります。平均3万円のお店が4万円になれば、手元に残る分は月約18万円から約38万円へと、倍以上になります。
この1日1万円は、次のどちらかで作れます。
ひとつは、人数で増やす方法です。5,000円×2名、つまり1日1組増えれば1万円です。決まって来てくれるリピーターや、予約で、1日1組増やします。
もうひとつは、客単価で増やす方法です。10名のお客さんが1人1,000円ずつ多く使ってくれれば1万円です。長くいてもらって、もう1杯、もう1品。そのためにも、2時間制にはしません。
だから、リピーターと予約は本当に大事です。リピーターの話は第1章に、予約の受け方と無断キャンセルの対策は第11章にまとめています。
最低賃金(全国加重平均)は、2019年度の901円から2026年度の1,177円へ、約31%上がりました。東京都は1,280円です[4]。飲食のアルバイトの平均時給も1,219円と過去最高になり(2026年9月)、非正社員が足りない飲食店は59.1%にのぼります[5][6]。
決済手数料は、売上の1.54%(2014年度)から2.94%(2024年度)へ、10年でほぼ倍になりました[3]。
そうした中で、飲食業の倒産は2025年に1,002件となり、初めて1,000件を超えました。その9割近くが、資本金1,000万円未満の小さな会社です。2026年は1〜6月だけで509件と、さらに増えるペースです[7][8]。
「お客さんが少ない日を前提に、潰れない設計にする」という考え方は、今も正しいです。
ただし今の相場では、平均3万円だと、手元に月18万円ほどしか残りません。1日の平均4万円を最低ラインにして、決済手数料の約3%と、毎年の賃上げ分を、最初から計算に入れておきます。
そのうえで、リピーターと予約、長くいてもらう工夫で、平均を1万円ずつ上げていきます。
飲食店は3年で7割が閉店する、という話をよく聞きます。ただ、この数字の一次データは見つかりませんでした。
日本政策金融公庫が2016年に開業した会社を追った調査では、4〜5年で廃業したのは、飲食店・宿泊業で14.7%でした。全業種の中で最も高い数字ですが、7割には遠い数字です[9]。
ただし、借金なしで閉める個人店は倒産の統計に入らないので、実際に閉めるお店はもっと多いとみられます。