小さな飲食店の利益設計
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第3話お客さんが少なくても潰れない数字動画は準備中です

第3章 現場の話+データ

お客さんが少なくても潰れない数字

お客さんはそんなにいっぱい来ない。それを前提に設計します。ただ、今の相場では1日3万円だと、オーナーの生活費がほとんど残りません。1日の平均で4万円を最低ラインにして、計算式で確かめます。

この章のポイント

  • 0組の日も、8組の日もある。売上は1日の平均で考える
  • 今の相場で試算すると、手元に残るのは平均3万円で月約18万円、平均4万円で月約38万円
  • 平均が1万円上がると、手元は月約20万円・年約241万円増える。だからリピーターと予約、長くいてもらうことが大事
現場の話店をやってきた中で見てきたこと

お客さんはそんなにいっぱい来ない

  • 個人の飲食店は、1日に1〜2人しか来ない日も結構ある(平日の、本当に来ない日)
  • 繁盛するのは金曜の夜や土日。ただし場所による
    • オフィス街なら平日が盛んで、土日はあまり入らない
  • 2階の店で流れのお客さんを狙うと、まったく来ない可能性もある
  • その日は、人件費だけが削られていく

1日の平均で、利益が出る作り方にする

お会計1日の平均
1人5,000円 × 8名(4組)
合計¥40,000
0組の日も、8組の日もある。ならした平均で4万円を最低ラインにする。
お会計1か月分
4万円 × 30日
合計¥1,200,000
この平均でも、人件費を含めて赤字にならず、オーナーの生活費が残る状態にしておく。

8卓くらいの店の、1日の売上の目安

  • 1日の売上の目安
  • 3万円を切る日もザラにある
  • 平均の最低ライン(4万円)
  • まず最低のケースを守れる状態にしておく。人件費も含めて
  • 人気になってきたら、もう少しお金をかけていい

平均3万円なら、休みは作れない

  • 本当に1日平均3万円しか売れないなら、30日・31日まるまる営業する必要がある
  • 最初も、途中でも、それくらい大変な時期がある
  • だから、ずっと営業し続けられる商品設計・スタイル設計が重要

人の配置も、一番下のラインに合わせる

  • 小さな店は最初、「自分+アルバイト1人」くらいの感覚でやる
  • 土日や繁忙期だけ2人にする
  • 平日いつも3万円なのに、いきなり20万円分のお客さんが来ると、かなり大変なことになる
  • それでも、一番下のラインに合わせておく必要がある

損益分岐点は、数字ではっきり出しておく

  • スタートのところと損益分岐点は、数字を出してはっきり理解しておく
  • 低く設定しておけば、プラスになるのが早い
  • 「1日10万円(10枚)売れるぞ」という計画だと、売れなかった時のリスクがすごく大きい
  • 場所にもよるが、売上が上がらなかった時のリスクを考えた設計が必要

回転より、長くいてもらう

  • 小さな店は、お客さんを回転させるより、長くいてもらうことが大事
  • ゆっくりしてもらえれば、もう1杯・もう1品と注文が増えて、客単価が上がる
  • 2時間制のような時間の区切りは避ける
  • 回転より単価の話は、第1章 リピーターが一番大事。回転より単価で詳しくまとめています
データで答え合わせ2025〜2026年の調査・統計と、それを使った試算
今の相場で修正

1日3万円×30日=90万円でも、人件費込みで赤字にならない設計

  • 月90万円(年1,080万円)は、従業者1〜4人の酒場・ビヤホールの「1人あたり年間売上」1,114万円とほぼ同じ(日本政策金融公庫) [1]
  • 1人5,000円は、忘年会1回あたりの予算の平均5,004円(2025年10月)と同じくらいで、値付けとしては無理がない [2]
  • ただし経費の側が、当時とは大きく変わっている。今の相場では、平均3万円だと赤字にはならないが、オーナーの生活費がほとんど残らない(下の試算)

今の相場で、1日の平均ごとに計算する

計算に使う数字(1か月)です。

項目金額根拠
食材・飲み物売上の30%原価率30%
決済手数料売上の2.94%飲食店の平均(2024年度) [3]
アルバイト1人16.64万円東京都の最低賃金1,280円×月130時間 [4]
家賃・光熱費・その他26万円仮の数字(家賃15万+光熱費6万+その他5万)
計算式1か月
月の売上 = 1日の平均 × 30日
原価と手数料 = 月の売上 × 32.94%
手元に残る分 = 月の売上 − 原価と手数料 − 42.64万円
32.94%は、原価率30%と決済手数料2.94%を足したもの。42.64万円は、アルバイトと家賃・光熱費・その他を足したもの。
1日の平均手元に残る分月の売上(30日)原価と手数料アルバイト・家賃など
3万円約17.7万円90万円29.6万円42.6万円
4万円約37.8万円120万円39.5万円42.6万円
5万円約58.0万円150万円49.4万円42.6万円
6万円約78.1万円180万円59.3万円42.6万円

「手元に残る分」は、税金・社会保険・借入の返済・設備の修理の前の金額です。家賃・光熱費は統計が見つからなかったため、仮の数字を置いています。自分の店の数字に置きかえて計算してください。原価率が35%なら、手元に残る分は上から順に4.5万・6万・7.5万・9万円減ります。売上が増えるとアルバイトの時間も増えることが多いので、5万円・6万円の行は少し多めに出ています。

  • 平均3万円だと、赤字にはならないが手元は月約18万円。家賃が高い場所や、アルバイト2人の体制なら赤字になる
  • 平均4万円なら、週1日休んで月26日の営業でも、手元に約27万円残る(4万円×26日=104万円で計算)

1週間で計算してみる

月曜は0組、金曜・土曜は混む、という1週間です。1組2名、客単価5,000円で計算します。

曜日売上計算式(客単価 × 人数)組数
月0円5,000円 × 0名0組
火50,000円5,000円 × 10名5組
水20,000円5,000円 × 4名2組
木30,000円5,000円 × 6名3組
金60,000円5,000円 × 12名6組
土80,000円5,000円 × 16名8組
日40,000円5,000円 × 8名4組
1週間280,000円計56名28組
  • 1日の平均 = 280,000円 ÷ 7日 = 40,000円
  • 月の売上 = 40,000円 × 30日 = 1,200,000円
  • 手元に残る分 = 1,200,000円 − 1,200,000円 × 32.94% − 426,400円 = 約37.8万円
  • 月曜が0組でも、ほかの日で取り返せれば平均4万円になる。0組の日があることを前提に、1週間でならして考える

1万円の差で、暮らしが変わる

増える売上1か月
1万円 × 30日
合計¥300,000
家賃やアルバイトの代金は変わらないので、増えた分から引くのは原価と手数料だけ。
増える手元1か月
30万円 −(30万円 × 32.94%)
合計¥201,180
1年にすると約241万円。平均3万円の店が4万円になれば、手元は月約18万円から約38万円へ、倍以上になる。

1日の1万円は、次のどちらかで作れます。

人数で1日
5,000円 × 2名(1組)
合計¥10,000
決まって来てくれるリピーターや、予約で、1日1組増やす。
客単価で1日
1,000円 × 10名
合計¥10,000
長くいてもらって、もう1杯・もう1品。2時間制にしない。
  • だから、リピーターと予約は本当に大事。リピーターは第1章、予約の受け方と無断キャンセルの対策は第11章にまとめています

経費は、この数年で大きく上がった

  • 最低賃金(全国加重平均)は、2019年度の901円から2026年度の1,177円へ、約31%上がった。東京都は1,280円 [4]
  • 飲食のアルバイトの平均時給は1,219円で過去最高(2026年9月)。非正社員が足りない飲食店は59.1% [5][6]
  • 決済手数料は、売上の1.54%(2014年度)から2.94%(2024年度)へ、10年でほぼ倍になった [3]
  • 飲食業の倒産は2025年に1,002件で、初めて1,000件を超えた。9割近くが資本金1,000万円未満の小さな会社。2026年は1〜6月だけで509件と、さらに増えるペース [7][8]

今の相場での言い方「お客さんが少ない日を前提に、潰れない設計にする」という考え方は今も正しい。ただし今の相場では、平均3万円だと手元に月18万円ほどしか残らない。1日の平均4万円を最低ラインにし、決済手数料の約3%と毎年の賃上げ分を最初から計算に入れる。そのうえで、リピーターと予約、長くいてもらう工夫で、平均を1万円ずつ上げていく。

よく聞く「3年で7割閉店」について

この数字の一次データは見つかりませんでした。日本政策金融公庫が2016年に開業した会社を追った調査では、4〜5年で廃業したのは飲食店・宿泊業で14.7%でした。全業種で最も高い数字ですが、7割には遠い数字です [9]。ただし、借金なしで閉める個人店は倒産の統計に入らないので、実際に閉める店はもっと多いとみられます。